つくれるもの

法律事務所の案件・期日・顧客管理システムを作る費用と機能

公開 2026/7/30

法律事務所で案件と期日、依頼者情報を管理するイメージ

「案件ごとの進捗が担当弁護士の頭の中にしかない」「期日や時効を各自のカレンダーで管理していて冷や汗をかく」——法律事務所の業務は、案件と依頼者の管理、期日の厳守、時間の記録という、システム化と相性の良い作業の集まりです。案件・顧客管理システムは、依頼者と案件の情報を一元化し、期日を全員で共有してアラートで守り、タイムチャージや実費を記録して請求までつなげる仕組みです。この記事では、弁護士・法律事務所を対象に、こうしたシステムでできること、期日管理や利益相反チェックといった法律事務所ならではの要素、既製ソフトと個別開発の違い、守秘・セキュリティ、費用の相場、そして一律100万円で作れる範囲までを、具体例を交えて解説します。

法律事務所が抱える案件・期日・顧客管理の悩み

法律事務所の業務は専門性が高い一方で、事務の中身は「案件ごとに、依頼者ごとに、期日を守りながら進捗を追う」ことの繰り返しです。多くの事務所が、次のような困りごとを抱えています。

  • 案件と依頼者の管理:一人の依頼者が複数の案件を持ち、一つの案件に複数の弁護士・事務局が関わる。どこまで進んだかが担当者の頭の中にしかない
  • 期日・時効・締切の管理漏れ:提訴期限、控訴期限、時効の完成、提出書類の締切が案件ごとにバラバラで、各自のカレンダーやメモで管理している。抜けは重大な過誤につながる
  • 利益相反チェック:新規の相談・受任のたびに、既存の依頼者や相手方との関係を確認する必要があるが、台帳が分散していると見落としが起きる
  • タイムチャージ・実費の記録:どの案件に何時間使ったか、印紙代や交通費などの実費をいくら立て替えたかが、後からまとめて思い出しになりがちで、請求の抜けや過少計上が起きる
  • 報酬・請求の計算:着手金・報酬金・タイムチャージ・実費が混在し、案件ごとに計算方法が違うため、請求書作成に手間がかかる
  • 書類・証拠の管理:訴状・準備書面・証拠・契約書などが案件ごとに大量に発生し、どれが最新版か、どこに保存したかが分かりにくい
  • 依頼者との連絡:進捗の問い合わせに都度対応し、同じ説明を繰り返す。連絡の履歴が個人のメールに埋もれる

これらは「事務が下手だから」ではなく、会計ソフトと表計算と紙とメールが併存し、それらをつなぐ仕組みがないために起きる構造的な問題です。案件が増え、関与する人が増えるほど、この分断が事務負荷と過誤リスクの温床になります。案件・顧客管理システムは、この分断を一本につなぎ、「案件と依頼者を一元化する」「期日を全員で守る」「使った時間と実費をその場で記録する」を実現する道具です。目安としては、係属中の案件が数十件を超えた、弁護士や事務局が複数人になった、期日管理が個人任せで不安、タイムチャージの記録が後回しになっている、のいずれかに当てはまったら、システム化を考える頃合いです。

弁護士業務システムの主な機能

法律事務所向けのシステムは、大きく7つの機能領域で考えると要件がまとまります。すべてを最初から作る必要はなく、自事務所の困りごとに近い領域から選びます。

機能領域具体的にできること
案件・依頼者管理依頼者と案件を関連づけて登録。案件区分(民事・家事・刑事・企業法務など)、相手方、担当弁護士、進捗ステータスを一元管理
期日・スケジュール・アラート期日・時効・締切を案件に紐づけて登録し、事前に担当者へ通知。未完了の期日を一覧で可視化
タイムチャージ・実費記録案件ごとに作業時間と作業内容を記録。印紙代・交通費・郵送費などの実費を立替として登録
報酬・請求着手金・報酬金・タイムチャージ・実費を集計し、請求書を作成。入金状況を管理
書類・証拠管理案件ごとに訴状・準備書面・証拠・契約書などを整理し、版と保存場所を管理
利益相反チェック新規受任時に依頼者・相手方の名称を照合し、既存案件との重複を検知
依頼者ポータル依頼者が進捗や次回期日、請求状況を自分で確認できる画面を提供

このうち書類・証拠管理と依頼者との連絡も、案件を軸に置くと整理しやすくなります。訴状・準備書面・証拠・契約書といった書類は案件ごとに大量に発生するため、案件のデータにひも付けて版と保存場所を管理すれば、「どれが最新版か分からない」「保存先を探し回る」といった手間が減ります。依頼者との連絡も、個人のメールに埋もれさせるのではなく、案件ごとに記録を残すことで、進捗の問い合わせにも履歴を見ながら答えられるようになります。

案件を軸にした管理の考え方は案件管理システムでできること、請求の集計や入金管理の詳細は請求管理システムの作り方も参考になります。士業全般の書類作成・顧客管理の観点は士業向け書類作成・顧客管理システムにまとめています。

期日・時効管理がなぜ最重要か

法律事務所のシステム化で、最初に、そして最も重視すべきなのが期日管理です。他業種であれば納期の遅れは謝罪と再調整で済むこともありますが、法律事務所では提訴期限・控訴期限・時効の徒過が、依頼者の権利を失わせる重大な過誤に直結します。だからこそ、期日は個人の記憶やカレンダーではなく、仕組みで二重三重に守る必要があります。

Excelや紙の管理簿でも期日は書き残せますが、法律事務所の期日管理には限界があります。Excelは開いて見ている人にしか通知が届かず、記入漏れや上書きミスがあっても誰も気づきません。紙の管理簿は事務所にいないと確認できず、担当者ごとに別のノートで管理していれば全体像が誰にも見えません。つまりExcel・紙は「記録」はできても「確実に気づかせる」仕組みを持たず、期日漏れ=重大過誤というリスクの高い業務には力不足です。ここが、通知と可視化を備えたシステムに置き換える最大の理由になります。

システムで期日管理を設計するときの要点は次の通りです。

  • 期日は案件に紐づけて登録:担当者個人のカレンダーではなく、案件のデータとして持つ。担当が変わっても期日が引き継がれる
  • 事前アラートを複数段階で:期日の当日だけでなく、1週間前・3日前など複数のタイミングで担当弁護士と事務局の双方に通知する
  • 未完了の可視化:迫っている期日、対応済みかどうかを一覧で表示し、事務所全体で漏れがないかを確認できるようにする
  • チェックの二重化:担当者が対応済みにしたら、別の人が確認する運用を画面上で回せるようにする
法律事務所で案件ごとの期日と進捗を共有するイメージ
弁護士業務システムの価値は、期日と進捗が事務所全体で共有され、期日漏れという重大リスクを仕組みで防げること。

期日管理を仕組み化するだけでも、システムを導入する意味は十分にあります。逆に言えば、この機能が事務所の運用に合っていないシステムは、どれだけ他が優れていても法律事務所には向きません。

タイムチャージ・実費・報酬計算の仕組み

法律事務所の請求は、着手金・報酬金という成果に対する報酬と、タイムチャージという時間に対する報酬、そして立て替えた実費が混在するのが特徴です。ここを記録する習慣と仕組みがないと、実際に使った時間や実費が請求から漏れ、事務所の収益を取りこぼします。

システムで扱うと便利な要素を整理します。

  • タイムチャージの記録:案件を選び、作業日・作業時間・作業内容を記録する。移動中や打ち合わせ直後にその場で入力できると、後からの思い出し入力による漏れがなくなる
  • 実費の立替記録:印紙代・予納郵券・交通費・謄写費用などを、案件に紐づけて登録。請求時に自動で集計される
  • 報酬体系への対応:案件ごとに着手金・報酬金・タイムチャージ単価を設定し、混在した料金体系でも一枚の請求書にまとめられる
  • 請求と入金の管理:請求書を作成し、入金があったかどうか、未収がいくら残っているかを一覧で把握する

利益相反チェックも、この案件・依頼者データがそろっていれば実装しやすくなります。新規の相談や受任のたびに、依頼者名・相手方名をシステムに登録された既存案件と照合し、重複や関係の疑いがあれば警告を出す仕組みにすれば、台帳が分散していたときの見落としを減らせます。最終的な判断は弁護士が行うものですが、機械的な照合を先に済ませておくことで、確認の抜けを防ぐ助けになります。

タイムチャージの単価や報酬の割合は事務所ごとに大きく異なるため、この部分こそ個別開発で自事務所のルールに合わせる価値が大きい領域です。請求周りの一般的な設計は請求管理システムの作り方も合わせて確認してください。

既製の弁護士業務システム vs 個別開発

弁護士業務向けのパッケージソフトやクラウドサービスも存在します。まずは既製品を検討し、自事務所の運用に合うなら無理に個別開発する必要はありません。判断のために両者を比較します。

観点既製の弁護士業務システム個別開発
導入までの速さ契約すればすぐ使える設計・開発の期間が必要
初期費用低い〜中程度まとまった初期費用がかかる
月額・維持費利用人数や機能で継続課金保守を依頼する範囲で決まる
運用への適合標準的な運用に合わせる必要自事務所の案件区分・報酬体系に合わせられる
既存ツール連携対応範囲に依存会計ソフトや既存台帳に合わせて設計できる
権利・データサービス提供者に依存成果物の権利とデータを事務所側に残せる

既製が向くケース:標準的な運用で問題ない、すぐ使い始めたい、初期費用を抑えたい。個別開発が向くケース:独自の案件区分や報酬体系がある、期日運用のルールが固まっている、使わない機能に月額を払い続けたくない、データと権利を自事務所に残したい。既製と個別の選び分けはパッケージと個別開発の違い、乗り換えづらさのリスクはベンダーロックインの回避も参考になります。

守秘・セキュリティで押さえるべきこと

法律事務所は守秘義務が業務の前提であり、依頼者の情報や証拠を扱う以上、セキュリティは後回しにできません。個別開発では、次の対策を最初から設計に組み込みます。

  • アクセス権限の細分化:案件ごと・役割ごとに閲覧・編集の範囲を分ける。担当外の案件の詳細は見えないようにできる
  • 通信と保存の暗号化:やり取りするデータと保存するデータを暗号化し、盗み見や持ち出しに備える
  • 操作ログの記録:誰がいつどのデータを見た・変えたかを記録し、不正やミスを追跡できるようにする
  • バックアップと復旧:定期的にバックアップを取り、機器の故障やトラブルからデータを守る

個人情報の扱いで押さえるべき基本は個人情報を扱うシステムの注意点にまとめています。個別開発なら、自事務所の守秘ルールに沿って権限やログを作り込め、成果物の権利も事務所側に残るため、要件に合わせた対策を取りやすいのが利点です。

費用相場と一律100万円で作れる範囲

費用は機能の範囲で変わります。規模別の目安を示します。あくまで一般的な相場感で、要件により幅があります。

規模主な機能費用の目安
小規模案件・依頼者管理、期日アラート数十万〜100万円台
中規模上記+タイムチャージ・実費記録、報酬・請求100万〜250万円
大規模上記+利益相反チェック、書類・証拠管理、依頼者ポータル、会計連携250万円〜

D-oneApp では、料金を**一律100万円(スタンダード)/一律200万円(プロ)**で提供し、追加費用なし・着手前に総額が確定・成果物(ソースコード)の権利は事務所側に渡すという形にしています。一律100万円で作れる範囲の目安は次の通りです。

  • 案件・依頼者の一元管理(案件区分・担当・進捗ステータス)
  • 期日・時効・締切の登録と事前アラート、未完了の一覧表示
  • タイムチャージと実費の記録、案件ごとの集計
  • シンプルな請求書作成と入金状況の管理

利益相反チェックの高度な照合、依頼者ポータル、会計ソフトとの本格連携まで含めると、プロ(200万円)の範囲で検討するのが現実的です。費用の考え方はシステム開発の費用相場、一律100万円で何が作れるかは100万円でできることも参考にしてください。

導入効果とミニ事例・選び方チェックリスト

導入効果は事務所により幅がありますが、代表的なものを挙げます。

  • 期日漏れの防止:個人任せだった期日管理が仕組みで回り、重大な過誤リスクが下がる
  • 請求精度の向上:タイムチャージと実費がその場で記録され、請求の抜けや過少計上が減る
  • 引き継ぎの円滑化:案件の進捗と履歴が共有され、担当が休んでも状況が分かる。新任への引き継ぎも早い
  • 問い合わせ対応の削減:依頼者ポータルで進捗を確認してもらえれば、都度の問い合わせ対応が減る

例:弁護士3名・事務局2名の事務所のケース。係属案件が増え、期日を各自のカレンダーで管理していたところ、繁忙期に締切直前の駆け込みが常態化していた。期日を案件に紐づけて登録し、事前アラートと未完了の一覧を導入したことで、期日の抜けを事務所全体で確認できるようになり、駆け込み対応が減った——といった形が、システム化でよく見られる変化です(一般化した例で、実在の事務所ではありません)。

導入前に確認したいチェックリストです。

  • 期日・時効の運用ルールが整理できているか
  • 案件区分と報酬体系(着手金・報酬金・タイムチャージ)を洗い出せているか
  • 利益相反チェックをどこまで自動化したいか
  • 守秘のためのアクセス権限をどう分けたいか
  • 既存の会計ソフトや台帳と連携する必要があるか
  • 最初に解決したい困りごとの優先順位が決まっているか

進め方や発注の流れはシステム開発の発注の流れ、要件の固め方は要件定義の進め方にまとめています。

まとめ

法律事務所の案件・顧客管理システムは、案件と依頼者の一元管理、期日・時効のアラート、タイムチャージと実費の記録、報酬・請求、利益相反チェック、依頼者ポータルまでを担い、期日漏れという重大リスクを仕組みで防ぐ道具です。最重要は期日管理で、個人の記憶ではなく全員で守る形に変えることが要点です。既製ソフトで足りるなら無理に作る必要はありませんが、独自の報酬体系や期日運用、守秘のルールに合わせたい、データと権利を事務所に残したいなら個別開発が向きます。まずは最も困っている領域から小さく始め、一律100万円で作れる範囲を見極めるのが現実的です。自事務所の業務にどこまで合わせられるか、費用はいくらになるか、まずは無料相談でお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q法律事務所向けの案件・顧客管理システムを作る費用はいくらぐらいですか?
A

案件と依頼者の管理、期日のアラートだけなら数十万〜100万円台、タイムチャージや実費の記録、報酬・請求の計算、利益相反チェック、依頼者ポータルまで含めると100万〜300万円が目安です。機能を絞れば一律100万円でも実用的なものが作れます。

Q市販の弁護士業務ソフトがあるのに、なぜ個別開発するのですか?
A

市販ソフトは標準的な業務には強い一方、事務所ごとの案件区分や報酬体系、期日の運用ルール、既存の会計ソフトとの連携には合わせづらいことがあります。自事務所の運用にぴったり合わせたい、使わない機能に月額を払い続けたくない場合は個別開発が向きます。

Q期日や時効の管理漏れは本当に防げますか?
A

期日をシステムに登録し、事前アラートと担当者・関与弁護士への通知、未完了の可視化を組み合わせれば、抜け漏れは大きく減らせます。人の記憶やカレンダーに依存する状態から、全員で同じ期日を見る状態へ変えることが要点です。ゼロにはできませんが、二重三重の確認が仕組みで回るようになります。

Q依頼者の情報や証拠を扱うのでセキュリティが不安です。
A

守秘義務が前提の業務なので、アクセス権限の細分化、通信と保存の暗号化、操作ログの記録、バックアップを最初から設計します。個別開発なら自事務所のルールに沿って権限やログを作り込め、権利は事務所側に残るため、要件に合わせた対策を取りやすいです。