つくれるもの
工数管理システムを作る費用は?原価・採算の見える化を解説
「案件ごとにどれだけ手間がかかったか分からず、締めてみたら赤字だった」——工数管理システムは、メンバーの作業時間を案件やタスク単位で記録し、案件ごとの原価と採算(粗利)を見える化する仕組みです。勤怠管理が「いつ働いたか」を記録するのに対し、工数管理は「その時間をどの案件に使ったか」を追い、儲かっている案件・赤字の案件を数字で映し出します。この記事では、工数管理システムに必要な機能、Excel工数管理の限界、既製ツールと個別開発の使い分け、業種別の使い方、費用の相場、そして一律100万円で作れる範囲までを、赤字案件の早期発見に悩む方向けに解説します。
Excel工数管理の限界
多くの会社は、最初はExcelの工数表で作業時間を集計します。無料で自由に項目を組め、すぐ始められるからです。ところが人数が増え、同時に走る案件が10件を超えたあたりから、次のような壁が一気に表面化します。
- 入力の粒度がそろわない:人によって「1時間単位」「0.5日単位」「ざっくり感覚」と入力の細かさが違い、集計してもデータの精度がばらつく
- 後追い入力で実態とずれる:日々つけず月末に記憶でまとめて入力するため、細かい案件の時間が丸められ、実際の手間が見えなくなる
- 案件をまたぐ集計が重い:メンバー別のシートを案件別に組み替える、複数月をまたいで一つの案件を追う、といった集計に毎回手作業がかかる
- 原価・粗利までつながらない:入力した時間に単価を掛けて原価を出し、売上と突き合わせて粗利を出す——ここまでを自動でやろうとすると数式が複雑化して壊れやすい
- 予定と実績を比べられない:見積り時に想定した工数と、実際にかかった工数を並べて差を見る仕組みがなく、見積りが甘かったのか判断できない
- リアルタイムに見えない:いま各案件がどれだけ工数を消化しているか、赤字に近づいていないかが、締めるまで分からない
これらは「Excelの使い方が下手だから」ではなく、表計算ソフトが一時点の集計を作る道具であって、日々変わる工数を全員で入力し続け、原価まで自動でつなぐ道具ではないという構造的な限界です。案件数やメンバーが増えたときに破綻するのは自然なことで、そのタイミングがシステム化を検討すべきサインです。目安としては、同時に走る案件が10件を超えた、工数集計に月半日以上かけている、赤字案件に気づくのがいつも締めた後、のいずれかに当てはまったら考える頃合いです。
工数管理システムの主な機能
工数管理システムの機能は、大きく6つの領域に分けて考えると要件がまとまりやすくなります。すべてを最初から作る必要はなく、自社の困りごとに近い領域から選びます。
| 機能領域 | 具体的にできること |
|---|---|
| 工数入力 | 誰が・いつ・どの案件・どのタスクに何時間使ったかを、日々かんたんに記録する |
| 案件・タスク別集計 | 入力された工数を案件ごと・タスクごと・メンバーごとに自動で積み上げて集計する |
| 原価・粗利の可視化 | 工数に人件費単価を掛けて案件原価を算出し、売上と突き合わせて粗利・粗利率を表示する |
| 予定と実績の対比 | 見積り時の想定工数と実績工数を並べ、超過している案件や工程を洗い出す |
| 稼働率の把握 | メンバーごとに、稼働時間のうち案件に使えた割合(稼働率)を集計する |
| 請求連携 | 時間精算の案件で、確定した工数をそのまま請求データに渡し、転記の手間をなくす |
これらのうち、**土台になるのは「工数入力」と「案件・タスク別集計」**です。まずここを固め、後から原価・粗利、予実対比、稼働率、請求連携を重ねていくのが失敗しない順番です。機能を選ぶときのコツは、「あると便利」ではなく「ないと今困っている」を基準にすることです。赤字案件に気づけないのが痛いなら原価・粗利の可視化を優先、見積りが毎回ずれるのが痛いなら予実対比を先に、といった具合に、痛みの大きい順に並べます。全部を一度に揃えようとすると費用も期間も膨らむため、最初の版はあえて機能を絞り、運用に乗ってから育てる方が結果的に早く元が取れます。
勤怠管理・プロジェクト管理との違いを整理する
「工数管理」は似た言葉が多く混同されがちなので、隣接する仕組みとの関係を整理しておきます。ここを分けて考えると、自社が本当に作るべき範囲がはっきりします。
- 勤怠管理:出退勤の打刻から労働時間を記録し、給与計算や法対応(残業・有給)に使う仕組み。「いつ働いたか」を追う。詳しくは勤怠管理システムを作る費用を参照。
- 工数管理:記録した時間を「どの案件・タスクに使ったか」で振り分け、原価と採算を見える化する仕組み。「何に時間を使ったか」を追う。本記事のテーマ。
- プロジェクト管理:タスク・担当・期限・ガントで「作業をどう進めるか」を管理する仕組み。工数入力をその一機能として持つこともある。詳しくはプロジェクト管理システムを作る費用を参照。
三者はきれいに分かれるものではなく、重なり合います。勤怠で打刻した労働時間を、工数管理で案件別に振り分け、その実績をプロジェクト管理の進捗と突き合わせる——という一本の流れが理想です。ただし全部を一度に作ると重くなるため、まずは自社で一番詰まっている問い(多くは「案件ごとに儲かっているのか」)に答える工数管理から着手し、勤怠やプロジェクト管理とは後で連携させるのが現実的です。工数管理を独立させるか、勤怠やプロジェクト管理の一部として持つかは、自社がどの数字を一番見たいかで決めます。
業種別の使い方
「工数」という言葉が指すものは業種によって違うため、重視する使い方も変わります。代表的な業種ごとの勘所を挙げます。
- Web・広告制作:1案件に複数の制作物がぶら下がり、修正対応が読めない。制作物ごとの工数と、修正が何時間食っているかを把握し、赤字案件を早めに見つけるのが要点。
- システム・アプリ開発:見積り時の想定工数と実績の差が採算を左右する。工程(設計・実装・テスト)別の予実対比と、次の見積りへの実績の還元が中心。
- 士業(会計・法務・社労士):顧問先ごとに手間の差が大きい。関与先別の工数集計で、報酬に対して手間がかかりすぎている先を洗い出すのが勘所。
- コンサル・専門サービス:時間精算の案件が多く、稼働率が収益に直結する。メンバー別の稼働率と、確定工数からの請求連携が中心。
- 建設・工事:現場・工事番号ごとに人工(にんく)を集計する。現場別の労務原価を把握し、実行予算と実績を突き合わせるのが要点。
同じ「工数管理」でも、制作なら修正工数、開発なら工程別の予実、士業なら関与先別、コンサルなら稼働率、建設なら現場別の労務原価と、見たい軸が業種で異なるのがポイントです。ここが独自であるほど、既製ツールより個別開発が向きやすくなります。要件を詰めるときは、まず「自社は何の単位で採算を見たいか(案件・顧客・現場・工程)」を紙に書き出すと、必要な集計軸と入力画面が自然に浮かび上がります。
既製ツール vs 個別開発の比較
工数管理には多くの既製ツール(SaaS)があり、標準的な案件別の工数集計なら既製が安く早いです。一方で、独自の原価計算や集計軸、基幹システムとの連携が必要なら個別開発が生きます。両者の違いを整理します。
| 観点 | 既製ツール(SaaS) | 個別開発(受託) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 低い(無料〜数万円) | 数十万〜数百万円 |
| 月額 | 人数×月額が継続的にかかる | 原則なし(保守費のみ) |
| 導入スピード | 即日〜数日 | 数週間〜数カ月 |
| 独自の集計軸 | 合わせづらい | 案件・顧客・現場・工程を自由に設計 |
| 原価・粗利の計算 | 制約が多い | 自社の単価ルールで自由に設計 |
| 既存システム連携 | 制約が多い | 会計・販売・勤怠と自由に連携 |
個別開発が向くのは、次のようなケースです。
- 案件・顧客・現場・工程など、自社独自の単位で採算を見たいが、既製ツールの集計軸に当てはまらない
- 人件費単価の付け方や間接費の乗せ方など、原価計算のルールが自社固有で複雑
- 販売管理・会計・勤怠とつなぎ、売上と工数を突き合わせて粗利まで自動で出したい
- 時間精算の請求を、確定工数からそのまま起こしたい
- 人数が多く、SaaSの月額(1人あたり課金)が積み上がって割高になっている
逆に、標準的な案件別の工数集計で足りるなら、まず既製で試し、合わなければ個別開発という順番が堅実です。既製から個別開発への乗り換えを考えるサインは、「毎月の月額が人数分積み上がって割高」「Excelと二重管理になっている」「欲しい原価・粗利のレポートが既製では作れない」といった状態です。個別開発か外注かの判断は内製と外注の比較、依頼先の見極めは良い開発会社の見分け方も参考になります。
費用相場と機能別の目安
工数管理システムの費用は、集計する範囲と原価計算の深さで大きく変わります。規模別のおおよその相場は次の通りです(あくまで目安で、要件により上下します)。
| 規模・範囲 | 費用の目安 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 小(工数入力+案件別集計) | 数十万〜100万円台 | 工数の日次入力・案件/タスク/メンバー別の集計・一覧表示 |
| 中(+原価・粗利・予実対比) | 100万〜200万円 | 単価による原価計算・粗利表示・見積工数との差の可視化 |
| 大(+稼働率・請求連携・分析) | 200万〜400万円超 | 稼働率集計・請求データ連携・権限管理・詳細な採算分析 |
機能を足したときの追加目安は、原価・粗利の可視化で+30万〜60万円、予定と実績の対比で+20万〜50万円、稼働率の集計で+20万〜40万円、請求連携で連携先の仕様により変動、会計や販売管理との連携でさらに変動、というイメージです。
費用が上下する主な要因は次の4つです。この4点が膨らむほど金額は上がります。逆にここを絞れば、同じ「工数管理」でも費用は大きく下げられます。
- 集計軸の多さ:案件・顧客・現場・工程・メンバーと軸を増やすほど、集計と画面の作り込みが必要になる
- 原価計算の複雑さ:メンバー別単価、間接費の配賦、時期による単価変更など、計算ルールが複雑なほど工数が増える
- 役割と権限の多さ:メンバー・リーダー・管理者で見える範囲(自分の工数だけ/全社の採算まで)を分けるほど権限設計が重くなる
- 外部連携の有無:勤怠・会計・販売管理・請求との連携は個別対応で費用が増える
費用の考え方そのものはシステム開発の費用相場や見積もりの読み解き方、工数の見方は人月の考え方もあわせてご覧ください。
導入効果とミニ事例
工数管理システムを入れると、数字と手触りの両面で効果が出ます。よくある変化は次の通りです。
- 赤字案件の早期発見:案件ごとの原価が進行中に積み上がるため、粗利がマイナスに傾く前に手を打てる
- 見積り精度の向上:過去案件の実績工数が根拠になり、次回以降の見積りが「勘」から「実績ベース」に変わる
- 稼働率の見える化:誰がどれだけ案件に時間を使えているかが分かり、負荷の偏りや余剰を調整できる
- 請求漏れの防止:時間精算の案件で、確定工数がそのまま請求につながり、計上漏れや転記ミスが減る
例:Web制作会社のケース。案件ごとの採算をExcelの工数表で締めていたが、集計が追いつかず「どの案件が赤字か」が締めるまで分からなかった。工数を日次で案件別に入力し、単価を掛けて原価と粗利を表示するようにしたところ、修正対応が膨らんで赤字化しつつある案件を途中で把握でき、追加の対応範囲を早めに相談できるようになった、という形です。
例:受託開発会社のケース。見積り工数を各自の感覚で出していたため、実績とのズレが大きく採算が読めなかった。工程別に予定工数と実績工数を並べて差を表示するようにしたところ、どの工程で見積りが甘くなりがちかが分かり、次の見積り精度が上がった、という具合です。
例:士業事務所のケース。顧問先ごとの手間の差が見えず、報酬に対して割に合わない先が混じっていた。関与先別に工数を集計したところ、手間がかかりすぎている先が明確になり、報酬改定や業務の見直しの根拠が持てるようになった、という形です。いずれも架空の一般化した例ですが、案件数やメンバーが増えた会社で起きがちな典型です。効果は「作った機能の多さ」ではなく、一番痛い困りごと(多くは赤字案件の見逃し)にどれだけ的を絞れたかで決まります。
一律100万円で作れる範囲と選び方
D-oneAppは料金が一律100万円(大規模なプロプランは一律200万円)で、着手前に総額が確定し、追加費用はかかりません。工数管理は機能を絞りやすいため、一律100万円の枠と相性が良い題材です。
100万円の枠では、たとえば次のような構成が現実的です。
- 案件・タスクを選んで、日々の作業時間をかんたんに入力する画面
- 案件別・タスク別・メンバー別の工数集計と一覧表示
- メンバー単価を掛けた案件原価の算出と、売上を入れての粗利・粗利率の表示
- 見積り工数と実績工数を並べた予実対比
- 管理者・メンバーそれぞれの画面と権限(自分の工数だけ/全社の採算まで)
逆に、稼働率の詳細分析や請求システムとの双方向連携、会計・販売管理との自動連携までフルに含めると200万円のプロプラン側になります。成果物(ソースコード)の権利はお客さまに渡すため、後から別の会社に引き継ぐこともできます。「まず何を優先するか」を決めるための選び方チェックリストを用意しました。
- 採算を見たい単位は、案件・顧客・現場・工程のどれか
- 一番の困りごとは、赤字案件の見逃し/見積りのズレ/稼働率の偏り/請求漏れのどれか
- 原価計算は、メンバー一律単価で足りるか、役職別・時期別の単価が必要か
- 売上を入れて粗利まで出したいか、工数の集計だけで足りるか
- メンバーと管理者で見える範囲を分ける必要はあるか
- 勤怠・会計・販売管理・請求と連携させたいか
このチェックリストが埋まれば、要件はほぼ固まります。埋まらない項目があるうちは、まだ作るには早い合図なので、現場に聞いて先に言葉をそろえておくと後の手戻りが減ります。作る前の整理は要件定義の進め方、費用の全体像は業務システムの費用相場、案件そのものの管理とセットで考えたい場合は案件管理システムを作る費用もあわせてご覧ください。
まとめ
工数管理システムは、案件・タスク別に作業時間を記録し、案件ごとの原価と採算(粗利)を見える化する仕組みです。労働時間そのものを追う勤怠管理、作業の進め方を追うプロジェクト管理とは役割が分かれ、こちらは「何に時間を使い、それが儲かっているか」を映し出します。費用は「工数入力と案件別集計だけなら数十万〜100万円台、原価・粗利や予実対比、請求連携を足すと100万〜400万円超」が目安。業種によって見たい軸(修正工数・工程別予実・関与先別・稼働率・現場別原価)が違うため、独自の集計や原価ルールが多いほど個別開発が生きます。Excel工数管理の限界を感じたら、まず「工数入力+案件別集計」から小さく始めるのがコツです。無料相談で「うちの工数管理、システム化すると採算はどこまで見える?」を一緒に整理しましょう。
よくある質問
Q工数管理システムを作る費用はいくらぐらいですか?
工数入力と案件別集計だけのシンプルなものなら数十万〜100万円台、原価・粗利の可視化や予実対比、請求連携まで含むと100万〜300万円が目安です。要件を絞れば一律100万円でも実用的なものが作れます。まず「何を見える化したいか」を先に決めるのが費用を抑えるコツです。
Q勤怠管理システムと工数管理システムは何が違いますか?
勤怠管理は「いつ出社していつ退社したか」という労働時間を記録し、給与や法対応に使います。工数管理は「その時間を、どの案件・どのタスクに何時間使ったか」を記録し、案件の原価や採算を見える化します。目的が労務か採算かで役割が分かれ、両方を連携させると入力の手間を減らせます。
QExcelでの工数管理では何が問題ですか?
各自がバラバラに入力するため粒度がそろわない、月末にまとめて記憶で入力するため実態とずれる、案件をまたぐ集計に手間がかかる、原価や粗利まで自動でつながらない、といった問題が起きます。人数や案件が増えるほど集計が破綻し、赤字案件に気づくのが締めた後になりがちです。
Q工数管理システムを入れると何が変わりますか?
案件ごとの実績工数が積み上がることで、どの案件が赤字傾向かを進行中に把握でき、手を打てるようになります。さらに過去の実績が見積りの根拠になるため、次回以降の見積り精度が上がります。稼働率が見えることで、無理な受注や特定メンバーへの負荷偏りも防げます。